嘘恋
「おしっ着いた」
「わ、海だー!!」
太陽に照らされてキラキラ光ってる。
水平線が綺麗に見えて
優しく吹く潮風が冷たくて気持ちいい。
「ここは穴場だから誰も来ねーよ!だから遊び放題なわけ!」
「そうなんだぁ。よくこんなところ見つけれたね!」
「まぁな!よしゃ遊ぶぞー!」
「おー!」
どうせなら水着持って来ればよかったなぁ。
夏だから泳げたのにもったいない。
「ほらー!早く来いよ!」
「ちょっとまってー!」
サンダルをひょひょいと脱いで成瀬くんの方へ走った。
「ひゃ…冷たくてきもちー!」
「香奈」
「ん?」
大きな手があたし手を思いっきりひっぱった。
え…っ。
「ぎゃあああああ!」
ざぼーんっ。
おまいっきり水にダイブ。
「げほっ!…いきなりなにすんのさ」
「ははっ!髪の毛ワカメみてぇ」
「うっさいわね!おかえしっ!」
成瀬くんの手をつかんでドーンっ思いっきり押し倒した。
「…しょっぺー!」
「おかえしだもんねー」
「ほら、こっち来て」
ん?
成瀬くんに言われたとおりにそばに行こうとしたんだけど…
彼は深いところにいるからあたしの身長では足がつかない。
「ちょっと〜足つかない!」
「ちびだなぁ。ほら、つかまれよ」
差し出された手を掴んでギュッとしがみつくように抱きついた。
「…さすがに理性が」
「だって抱きつかないと溺れちゃうっ」
「沈むぞ」
「は?」
「息吸って」
「え!?ちょっと!」
ゆっくり沈んでいく2人の体。
言われた通り思いっきり息を吸って海の中へ。
耳が遠くなる。
海の中は、波もなく静かだ。
太陽があるから明るくて、水も透き通っていてきれい。
水の抵抗で成瀬くんの体からあたしの体は離れた。
成瀬くんの手があたしの頬を撫でる。
そして、唇を重ねた。
まるで、お互いの酸素をもらい合うかのようなあついキス。
水は冷たいのになんだか熱く感じた。
「っ…ぷはっ!」
むりむり、息つづないから!
「どうだった?」
「どうって…聞かれても」
思い出してなんだか照れくさくなり目をそらした。
「かーわいっ。照れてんの?」
「なっ、照れてないし!」
優しく響く波の音が
あたし達の笑い声と一緒に
海に響いていた。