嘘恋
癌?
サナが?
「…なんだよそれ」
「突然、いなくなってごめんね。咲夜たくさん苦しんだよね。…ごめんね」
なにも、言えなかった。
別れた理由が癌?
病気だから、俺に迷惑かけないように別れたってことかよ。
…いまさらそんなのっ。
「今ね、あたし日本にいないの。成瀬のお父さんがいる病院でお世話になってるんだ」
父さんが働いてるのは有名な病院。
外国に行くことになるほど、危ないってことなんじゃないのか?
「なんで、あの時言わなかったんだよ!今さらなんで…」
戻れない。
俺はもう前に進んだんだから。
お前との思い出も全部捨てた。
残像もない。
「…ごめんね。成瀬には幸せになってほしかったんだ。…でもあたしまだ好きだから」
好きだなんて。
今更だよ、サナ。
「…あたしね、より戻したいの。あと少ししか生きられないかもしれない。…だから好きな人と過ごしたい」
やめろ。
「咲夜のお父さんに話してみたら、どうせならこっちに住ませようかなって言っててね?」
…やめろ。
「あとできっとお父さんから…」
その先を聞かずに電話を切った。
なんとも言えない、複雑な気持ち。
いきなり消えたのは、病気で
もう少ししか生きられない?
ならなんであの時、彼氏の俺になにも言わなかったんだよ。
一人で抱え込んで、辛い思いしてたのかよ。
「っ…」
なぁ、リサ。
相変わらず優しくて、儚くて。
ー…愛おしい。
なんでこのタイミングなんだよ。
俺にはもう香奈がいる。
香奈のことが好きで、あいつのためならお前のことだって忘れられるって思ってたよ。
でも、なんでだろうな。
心が 揺らいでる。