嘘恋
告白作戦
作戦その一
教科書忘れた作戦!
そしたら距離が近くなるし、こっそり話したりもできる。
「…成瀬くん」
「ん?」
「きょ…教科書みせて!」
「お、はい」
真ん中に置かれた教科書。
成瀬くんの体がこっちに寄ってきて
肩が…触れそうだよ!
やだなにあたし
これじゃただの変態みたい。
「香奈」
「んえ、なに?」
顔を上げると、成瀬くんの顔が近すぎて鼻がつきそうになった。
「わっ!ちょ…え!?」
「わりわり。ここの問題、教えて」
「あ、はいはい」
爆発しそうな心臓。
これじゃだめだ…。
あたしがドキドキしてどうするのよ!
確かに距離が近くなったけど
…やっぱりあたしには近すぎます。
「香奈ってさぁすぐ赤くなるよな」
「え?」
「俺の目、見て」
先生に見えないように態勢を低くして
あたしをみつめる成瀬くん。
見ろって言われても…。
てか、なにこの展開!?
ま、まぁ?見るくらいなら。
あたしも彼と同じように態勢を低くして
そっと、成瀬くんの目をみつめる。
茶色くて、透き通った瞳。
クリアすぎて、どこか冷たくも感じる。
そして、
その瞳にはあたしが映っていて。
…ードキっ。
「……っむり!」
ばっと目をそらし
シャープペンを握る。
体温が上がってきて
顔なんて、きっと真っ赤だ。
そんなあたしを見て成瀬くんはクスッと笑った。
「かーわいっ」
だめだ、あたし。
これじゃ完全に成瀬くんのペースだ。
作戦一、失敗。