嘘恋
越えなければいけない壁 成瀬*
途方に暮れているうちに
もうあたりは薄暗かった。
…そろそろあいつ、自分の家に帰ったかな。
重い足取りで自分の家まで歩く。
秋の風は寒くて、冬とあまり変わらないほど冷たい。
…もうすぐ、雪でも降りそうだな。
「…ただいま」
あいつの靴はない。
…帰ったのか。
テーブル上にあったお菓子が半分なくなっている。
ごめんな、香奈。
いつもお前を振り回す俺を許してください
泣かせたくないとか思ってるのに、
いつも、一人で泣いてるね、香奈は。
ふと、テーブルにおかれたメモ書きが目に入った。
『ごめんね、あたし先に帰ってるね。帰って来たら連絡ちょうだい』
香奈の字だ。
携帯を握りしめて、テーブルの上に置いた。
……今はかけれない。
その時、家のチャイムが鳴った。