嘘恋
「かーな!おはよ〜」
「あっミカ!おはよ」
ミカはあたしの前の席にどかっと座るとあたしの両腕をつかんだ。
「昨日、見たのあたし!」
「 見たって?」
「咲夜だよ!公園の近くでばったり会ってさ」
「え…そうなの?どうだった?」
「んー、なにも変わってなかったよ?でも若干痩せたかなぁって感じだった」
「…痩せてたの?」
休んでる間になにがあったんだろうか。
痩せたってことはご飯ちゃんと食べてないんだろうか。
心配すぎるよ。
「そーそ。なんか家のことで大変らしいよ?」
…成瀬の親は今外国にいる。
もしかして、その両親になにかあったのかな。
…あたし、なんにもきいてないや。
「うん、昨日成瀬から電話きたの。でね、今日は学校来るんだってっ」
「そうなの!?よかったじゃーん」
「うん!」
「もうすぐクリスマスだよね。香奈はやっぱり咲夜と過ごすんでしょ?」
「うん!もちろんだよーん」
「いーね!あたしも彼と過ごすんだぁ。プレゼントとか、やっぱり買う?」
「うん!でも何がいいのかなぁ」
彼氏に贈り物なんて、成瀬が初めてだ。
男の人って、何をもらったら嬉しいんだろう。
…クリスマスだから、靴下のお菓子とか?
それじゃ幼稚すぎるか。
「じゃあさ、せっかくだし一緒に買いにいこーよ!」
「いくいく!じゃ今日は?ミカだいじょぶ?」
「うん!だいじょぶ!じゃ、そういうことで」
すると、タイミングよく担任が教室に入ってきて『席につけー』と呼びかける。
「じゃ、また後でね」
そういってミカも自分の席に戻っていった。
時計は8時32分をさしている。
いつもどおり、先生が教卓の前に立ってホームルームを始めた。
あたしの隣に、彼はいない。
…どうして?
もうホームルームだよ?
「今日も欠席は1人だけか」
担任の先生が少しため息をついて黒板に名札を貼った。
…来るって言ったじゃん。
成瀬に会えるとおもったから早起きしてずっと待ってたのに。
…寝坊でもしたのかな。
黒板に貼られている欠席の札の下には
成瀬の名前。
…嘘つき。