嘘恋
優しく包む彼の腕が
あたしの涙腺を緩ませた。
だーれだ、なんて
わからないわけないじゃんか。
だってあたしはずっと待ってたんだ。
会いたくて、ずっと、不安で…。
「成瀬…っ!」
振り向いて、また抱きしめ合った。
いつぶりだろう
こんなに近くに彼を感じたのは。
「ごめんな、1人にして。寂しかったよな」
「あたりまえじゃん…。連絡もくれないし、心配したんだから!」
「…うん。ごめん」
顔を上げて、見つめ合う。
…ミカの言ってたとおり、少し痩せてる。
力無く笑う成瀬は明らかに前の成瀬とは違っていた。
「なにがあったの?…そんなに大変だったの?」
成瀬はあたしの頭をかるく撫でて、微笑んだ。
「…いろいろあってさ」
……そこは、話してくれないんだね。
なら、聞かない。
「そっか。」
「…この後、あいてる?」
「ごめん。…ミカと約束してるんだ」
「…そっか!いいよいいよ。楽しんでおいで」
「あ、でも!明日からまたちゃんと学校来るでしょ?そしたら会えるじゃん」
「…そうだな!」
「うん!」
そして、あたしはミユとの約束があったからすぐにさよならをした。
あたしを見送った後の彼の笑顔の裏の本心に気付かずに。