嘘恋
「成瀬くんって…好きな人いるの?」
「…お?なに、気になるの?」
「別にー?ただ聞きたくなっただけ」
すると握っていたペンを置いて、頬杖をつきながらあたしを見た。
「お前だよ」
「……え?」
「香奈のこと」
何も言えずに固まるあたし。
だって、まさかこんな…。
「ー…だったら、どうする?」
「へ?」
「ははっ!冗談にきまってんだろ?俺好きな人なんていないから」
そう笑ってまた前を向きノートを書き始めた。
…なんだ。
ウソだったのか。
…期待しちゃったじゃん、ばか。
あんたを好きなあたしとって
その冗談が一番…辛いのに。
鈍感。
窓を眺めてバレないように目元を拭った。