嘘恋
「え…」
「たりない」
「やっ、ちょっとまって。成瀬?」
するとゆっくり近づいてきて、まるで焦らすようにあたしの頬にキスをする。
「…っ」
火照った唇は少しほんのり熱くて、あたしの体温をあげた。
そして、重なる唇。
角度を変えて、何度も何度も。
「…っ。んぁ」
成瀬の手があたしの服の中に入る。
え…!?
「ちょ…成瀬っ」
「だめ?」
だめって…言われても。
初めてだし、心の準備ができてないよ。
「だめ…じゃないけど」
すると、あたしの額にキスをした。
「優しくする」
…いいよね?
成瀬となら、怖くない。
こくんっと頷くとベットに運ばれた。
「あ、まって電気消してよ。恥ずかしい」
「あ、うんわかった」
ぱちっと電気が消える。
真っ暗の中でうっすら成瀬が見える。
上着を脱ぐ微かな音。
カチャカチャとベルのと音が響く。
大きい肩幅。
あたしなんてすっぽり埋もれてしまう。
たくましくて、綺麗な体。
そして、あたしは成瀬の首に腕を回した。
「…んっ。あ…」
成瀬の舌があたしの体をなぞる
そして、キスを落とす。
優しくて、温かくて
愛されてることがすごく伝わってくるんだ。
「成瀬…!」
彼の背中に爪をたてた。
「香奈…愛してるよ」
「んぁ…あたしも…っ!」
そして、一つに溶けた。
「香奈…大丈夫?」
「う、うん…平気」
でも…もう体力が何も残ってません。
初めては痛いって聞いたことあるけど、思ってたよりは痛くなかった。
でもね
気のせいかな
成瀬、泣いてた。
成瀬の涙が暗闇の中で小さく光ってあたしの頬に落ちたの。
それがなんの涙かはわからない。
だけど
気づかないふりをした。
「ははっ。可愛かったよ」
「なっ…やめてよ!」
恥ずかしくて背中を向けると、フワッと彼の腕に包まれた。
その力が、あまりにも強くて。
「どうしたのさ〜」
笑って聞いてみたけど、返事がない。
「…成瀬?」