嘘恋
「…だめだなぁ、俺」
「え?」
「このまま答えを出さなかったらどうにかなると思ってる」
…成瀬?
「決めらんねぇよ…」
闇に消えてしまいそうな、か細い声。
痛いくらい強くあたしを抱きしめるから、胸が苦しくなった。
成瀬らしくない弱音。
「成瀬…?」
理由もわからないのに涙が流れた。
こんなに強く抱きしめられてるのに
どうして
こんなに遠く感じるの?
「…どうしたの?きゅうに」
あたしを抱きしめる彼の手をぎゅっと握りしめる。
ちゃんと繋いでいないと
離れてしまう気がした。
「…ごめん」
謝られた理由さえ
なにも聞けないあたしは弱虫だね。
成瀬が目を閉じる気配がしたから、あたしも抱きしめられたまま目を閉じた。
明日は、クリスマスイヴだ。