嘘恋
だいぶ太陽も眩しくなり、涙も落ち着いたころ下へと降りた。
泣いたせいで目が重たいし頭も痛い。
なにか作ってくれたのか、リビングからはいい匂いが漂ってくる。
「おっやっと起きたか!おはよ」
テーブルに並べられた朝食。
やっぱり、作ってくれてたんだ。
「…おいしそ〜」
「だろ。ほら食え食え!」
成瀬に手を引かれるまま椅子に座る。
さっきの話には、お互い触れない。
あたしも成瀬もムリに笑顔を作っていた。
「あ、これ食い終わったらデートな」
「デート?」
「今日イヴだろ?せっかくだし楽しもーぜ!」
「…でも、明日でもよくない?クリスマスがホントのイベントじゃん」
「いーのいーの。イヴだって大事なイベントだろ?思い出はたくさんつくりたいじゃん」
「…うれしい。」
「かわいいなぁ」
そう笑い合っているとドアがガチャっと開いた。
あ…れ?
きれいな女の人。
どことなく、面影が誰かに似ている。
「あら、あなたが香奈ちゃん?初めまして」
「お、おはようございます!」
やっぱりこの人は成瀬のお母さんだ!
「カワイイ子ね。今日はゆっくりしていってね」
「あ、はい!」
にっこり笑うと、成瀬のお母さんも笑ってリビングを出て行った。
「成瀬のお母さんキレイな人だね!」
「……」
「ん?成瀬?」
成瀬はどこか一点を見たまま固まっちゃってる。
「ちょっと、なーるーせ」
べしっと叩くとはっとしてあたしに笑いかけた。
「あ、わーりわり!最近だめだわ思考が停止すること多い」
「えーこわいこわい」
「ほんとだよな!」
成瀬が笑ったからあたしも一緒に微笑んだ。
そして二人でご飯を食べを終わり、支度をして家を出た。
「どこいくのー?」
「映画見よーぜ!」
「映画?いーねいーね」
「ん」
するとふいにギュッと手を繋がれた。
「…お?」
「っなんだよ。いーじゃんこーしてる方があったかいし」
そう言って恥ずかしそうにプイッとあっちを向いてしまった。
…こうして手を繋いだの、いつぶりだろう。
うん。…あったかいね。