嘘恋
「なぁ、香奈はどこが楽しかった?」
「え?あー…どこかな。成瀬は?」
「俺は結婚式のところ!すれ違いばっかだった2人が幸せそうに結婚してたところがビビッときたかな」
大げさに手振りをつけて笑う成瀬を見て、あたしも大げさに笑った。
「あたしたちも、そんなふうに幸せに結婚できたらいいね!」
すると、成瀬は困ったように笑い
あたしの頭を撫でた。
…そうだなって、言ってくれないの?
些細なことでも不安になるよ、成瀬。
成瀬の言葉を待っていたら、よしっと呟いてあたしに微笑んだ。
「タクシー乗るぞ」
「へ、タクシー?」
近くにとまってたタクシーを見つけてあたしの手を引いた。
「なんで?どこ行くの?」
「…ないしょ!」
運転手さんに成瀬はこしょこしょと耳打ちをして、タクシーは動き出した。
「なんでわざわざ隠すのー?」
「ま、いいのいいの」
へんなの。
ふいっと顔をそむけ、窓からの景色を眺める。
イヴだけあって賑やかで
カップルも多く、みんな楽しそうだ。
楽しいよ、あたしも。
時々見えるクリスマスのツリーが
やけに明るく見えて目をそらした。
「香奈寒くない?大丈夫?」
「寒いところにでも行くの?」
「さぁねん」
…どこに行くんだろう。