嘘恋






「なぁ、香奈はどこが楽しかった?」





「え?あー…どこかな。成瀬は?」







「俺は結婚式のところ!すれ違いばっかだった2人が幸せそうに結婚してたところがビビッときたかな」







大げさに手振りをつけて笑う成瀬を見て、あたしも大げさに笑った。






「あたしたちも、そんなふうに幸せに結婚できたらいいね!」







すると、成瀬は困ったように笑い
あたしの頭を撫でた。








…そうだなって、言ってくれないの?








些細なことでも不安になるよ、成瀬。






成瀬の言葉を待っていたら、よしっと呟いてあたしに微笑んだ。








「タクシー乗るぞ」





「へ、タクシー?」







近くにとまってたタクシーを見つけてあたしの手を引いた。







「なんで?どこ行くの?」






「…ないしょ!」








運転手さんに成瀬はこしょこしょと耳打ちをして、タクシーは動き出した。








「なんでわざわざ隠すのー?」






「ま、いいのいいの」









へんなの。







ふいっと顔をそむけ、窓からの景色を眺める。







イヴだけあって賑やかで
カップルも多く、みんな楽しそうだ。







楽しいよ、あたしも。






時々見えるクリスマスのツリーが
やけに明るく見えて目をそらした。








「香奈寒くない?大丈夫?」





「寒いところにでも行くの?」






「さぁねん」







…どこに行くんだろう。



< 66 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop