嘘恋
成瀬の家を後にして、カギをしめた。
もう、立ち止まらない、振り返らない。
成瀬はいない。
ここに来てよかった。
やっと…自分にけじめをつけることができた。
ぎゅっと拳を握りしめて、カギをポストの中に入れる。
もうここには来ない。
…だから、合鍵は返すね。
あたしは1人でも大丈夫。
たくさん辛い思いしてきた。
あたしだけじゃなくて、成瀬も…サナさんも。
あたしに関わった全ての人、
みんなが幸せになれるように祈ってます。
成瀬
今頃、あなたは何を思っていますか。
これで、答えのない問いかけをするのも終わりにするね。
成瀬の優しさに甘えていたあたしを許してください。
わがままばかりで、困らせてばかりだった。
だけど、そんなあたしを愛してくれていた優しいあなたが大好きでした。
そっと、うっすらと積もる雪の上に足を踏み出す。
ばいばい、成瀬。
そして…永遠に。