嘘恋
似てる人
季節は春。
殺風景だった枝に桜が咲き始めた頃。
あたしは看護師になるという夢を持ち、看護学校に通っている。
もう今年で4年目になる。
大学に向かっている途中で、あたしはある人を見つけました。
「…っ」
桜を見上げる彼は
なんだか哀しげで、儚くおもえた。
風に揺れる柔らかそうな髪。
整った顔立ちに切れ長な目。
無表情なのに…どうしてそう感じるんだろう?
…例えるなら、桜みたいな人。
なにを思って見上げているのかわからないけど、その表情がなぜかあたしの胸を締め付けた。
「きれい…」
はっと、心の声が漏れて口を抑えた。
すると、あたしの視線に気づいた彼と目があった。
あ…。
「…なに」
「え?あ、いや。すいませんなんかガン見しちゃって…」
「…べつにいいけど。」
そう言って、歩き出してしまった。
「ちょ…あのー!」
あたしの声にゆっくり振り返る彼。
「名前教えてください!」
「はぁ?」
「あたし、香奈です!あなたは?」
一方的だけど、どうしても気になった。
「……シオン」
「え?」
するもふいっとそっぽ向いて、そしてまた歩き出してしまった。
…シオンくんか。
彼の背中を眺めてはっと思いつく。
あの人…あたしの大学と同じ方向だ。