嘘恋






放課後、成瀬くんに言われたとおり

校門の前で立っていた。









「…ーあれ?香奈?」










「あ、ミカー!」








「誰か待ってるの?」










「うんっ。成瀬くんを待ってるのだ!」









「えええ!あんた達もうそんな仲良くなったの!?」







「えへへ」








「ま、とにかく頑張って!」










「うん!じゃあね〜」









もちろん、頑張るつもりだもん。





なんだかこうして待っていると
彼氏を待ってる彼女の気分だ。






しばらく待っていると
ひょこっと校門から成瀬が顔を覗かせた。









「おっいたいた。わりぃな待たせて」











……約束したから当たり前だけど





あたしにはすごく幸せなことで。




こうして当たり前に隣に来て、あたしに笑いかける彼になぜか胸がキューっと痛くなった。










「どこ行くのー?」








「俺さぁ最近出来たあのデッカい店に行ってみたかったんだよ」








「あー、テレビでやってたやつ?」







「そそ!そこそこ」









「てかさ、なんであたしを誘ったの?」








そんなの友達といけばいいのに。




や、嬉しいよ?



けど成瀬は男女に好かれてるから
男友達だって多いはずだ。





それなのに、なんであたしを誘ってくれたのかなってさ。





前の席の女子行きたそうだったのに
その子じゃなくてあたしを誘った理由は?








「…あ!あそこじゃね?行くぞー!」







「え、ちょっと…ー!」









自然とあたしの手を握った大きな手。





しかも質問スルーされたし。





だけど、あまりにも楽しそうな彼の横顔を見てあたしも少し笑った。




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