嘘恋
「…メモ紙?」
もう一度だけ振り返るとシオンはもういなかった。
綺麗に折られたメモ紙を開いた。
『昨日のことだけど、付き合ってくれんなら図書室で待ってる。ムリなら来なくていいから』
…昨日のこと。
もちろん返事なんて決められるわけなくて。
友達、としか思ってなかったのは事実。
もちろん嫌いじゃない、むしろ好きな方だ。
でも、どうしても重なるの。
…ー成瀬と。
一度見えてしまったものはなぜかずっとかわらなくて。
付き合うなら、もちろんシオンを見つめて
ちゃんとシオンだけを想っていたい。
紙を握りしめて、ポケットにしまった。
…あたしは。