嘘恋
ガラっ…。
おそるおそるドアを開けて覗いてみた。
この独特の匂いと、静かな安心感。
…ー図書室。
いると思っていた彼の姿はなかった。
…ーあたし、なんでここに来たんだろ。
返事が決まったわけでもないのに。
…それなのに、ここにきてしまった。
今ならまだ…戻れる。
シオンが来てない今なら…まだ。
ドアを閉めて振り返った時
ドンっ。
「…っ」
何かに衝突して
鼻を押さえながら上を見上げた。
っ…。
「来て…くれたんだ」
…シオン。
鼻を打ったのは、彼の胸にぶつかったから。
そんな彼があまりにも嬉しそうに微笑むから。
「…ごめんっ。」
「なんで謝るんだよ」
「…あたし」
…言葉が、出て来ない。
涙がこみ上げてきて、とっさに走り出そうとしたらまた…手を掴まれた。
そしてそのまま引っ張られ、図書室に連れ込まれた。