日和さんの言うことには
「湊の部屋、やっぱすごいね、アンタ金持ちだろ。」
ゆりあがこちらを向いた。瞬きをしているようだが、残念だなことに風は起こっていない。
「いや、そうでもないよ。普通じゃない?」
「えー。でもでも、このマックのパソコンも、湊くんのカメラも、レンズも全部高いんじゃないの?」
輝がわざとらしく首をかしげる。
「そうだけど、一気に買った訳じゃない。俺は小学生の頃からカメラが好きだったから、少しずつお金をためて、買い集めた。」
「へえ、すげえな」
たしかに、大変だった。
でもお陰で、春の部屋の棚は今、こんなにも好きなもので溢れている。
「でさ、課題の話だけど。」
春はレンズを拭き終えた。
「どういう方向性で作っていくか。」
一応全体のテーマは決められている。そのテーマに合わせて衣装を四着作るのだ。
「四季でしょう?だったら....」
んー、と首をかしげ輝は考えている。
次に発言をしたのはゆりあだった
「アタシ思うんだけど、そのまま作ってもダメだよね、なにか1つうちらのエッセンスを入れないと.......」
皆が春の方を見た。どうやら意見を求めているらしい。
「俺的には、幻想的な演出が得意なんだ。あ、写真の話な。だからそういう風にしてくれたらくれたら助かるし、成功したとき、ウケがいい。」
「うんうんいいね!楽しそう。」
春は具体的にどうするか考えた。が、思いつかない
このメンバー全員がある程度楽しめる方向性に持っていきたいとは思っている。
作品は楽しく作った方がいいものになるということを春は知っていた。
「天使」
佐藤が初めてしゃべった。あまりに唐突だったのと、意外と声が低いということに驚く。
それより
「今お前天使って言ったか」
佐藤は頷くだけだった。もう一度声は聞けないらしい。
「ああ、そういうことか、俺らのコンセプトが、天使。」
いいかもしれない。昔の画家が描いたような、神秘的で、幻想的な天使を、四季で彩る。
「それやってみたい。」
3人がほぼ同時に言った。
おい、いい仕事するじゃないか佐藤。
「とりあえず、輝はデザインをなんパターンか考えるんだ。ゆりあはそれに合わせてメイクを考えて。佐藤は輝と相談しながらどのデザインがいいか、生地はどれがいいかアドバイスを。」
3人はこくこくと頷いた。
「それで」
春はとん、と自分の胸を叩いた。
「モデル探しは俺に任せてくれ。」