Distopia
ほんの少しだけ、パーカーのポケットから何かを探す素振りを見せようとしたが、すぐ小さな溜め息がてらやめた。
両手がふさがっている手前、仕方ないと言えばその通りだが。

――瞬次。


ドゴンッ!


扉の合わせ目掛けて、繰り出された一撃。
細身からの何気なさそうな蹴りは、その扉に直撃する間際まで扉にこそ軍配が上がりそうだったにも関わらず、事を終えてみれば扉はただの木片へと姿を変えていた。
壁と接続されていた蝶番の大半が吹っ飛び、申し訳程度にぶら下がっているだけだ。

その現状を黙視して小さく嘆息すると、あたかも何もなかったかのように屋敷内へと足を踏み出し…。

「このっバカとかげ~っ!」
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