雨とumbrella
昼休みは、私にとって唯一ゆっくりできる時間。図書室は、私の部屋みたいな場所。
こんな場所誘っても美織と奈々が来るわけないから、いつもひとりでここに来るんだ。小さい時から、本は私の親友。
今日も昨日借りたばかりの本を返却しに行く。
ゆっくり自分の時間を過ごしていると、うるさい男子生徒が鬼ごっこをしながら図書室に走って来た。
みんなが静かに読書していたのに、その男子達は知らん顔で鬼ごっこを続ける。
「やめてください、迷惑です!」図書委員の人が注意しているのに、全く聞く耳も持たずに騒ぐ。
と…走って来たひとりの男子生徒が私のそばの本棚に誤って体を打ち付けた。
ぐらり。本棚が私の方に倒れる。
いやだ!…そう思って目を閉じた。
あ……れ……?痛くない。ドサドサと本が落ちる音は聞こえるのに。
ゆっくり目を開けると………ひとりの男子生徒が、私の代わりに倒れた本棚を受け止めていた。
慌ててみんなが本棚を立てる。
「痛た……。」
と辛そうな表情を浮かべて、その男子は打ったところを手でさすっている。
「す、すみません!大丈夫ですか?!」
私はその男子の顔を覗き込んだ。
「/////!」
……綺麗な輪郭、切れ長の瞳、通った鼻筋にメガネが良く似合う、美少年がそこにいた。
「あ……////」
私は思わず後ずさりしてしまった。
「えっと……////」
ドキドキドキドキ……。心臓が早く波打つ。
ドキドキして、もじもじしてると、次はその美少年が私のことを覗き込んだ。
「大丈夫?ケガはなかった?」
甘い顔で見つめられると、もう心臓はさらに早く波打って。
「は、はい…。大丈夫です……ありがとうございました……。」
ペコッと頭を下げると、その美少年は顔を赤らめた。
「なら良かったよ…。良かった、うん……。」
照れ臭そうに頭をかいて、私が落とした本を拾ってくれた。
キーンコーンカーンコーン。昼休み終わりのチャイムが鳴る。
私は本を受け取って、
「ありがとうございました……では。」
と、さっと向きを変えると、小走りで教室に帰った。
心臓がうるさいまま。