スセリの花冠
「アルファス……待って」

アルファスは反射的に足を止めると、列柱の脇に佇む愛世を見つけて声をかけた。

「アイセ!何をしているんだ」

「待っていたの、アルファスを」

愛世はアルファスにフワリと甘く微笑むと、ゆっくりと歩を進め、潤んだ瞳で彼を見上げた。

「アルファス…話があるの。二人きりで」

アルファスは騎馬隊長のディルを従えていたが、軽く頷くと彼を先に向かわせ、再び愛世に向き直った。

「どうした?アイセ」

アルファスの問いに、愛世ははにかむような笑顔を見せて顔を傾けた。

「アルファス…私…アルファスが好きなの。凄く好き。あなたを愛してる」

愛世はそう言って背伸びをすると、アルファスの首に細い腕を絡ませる。

一方アルファスは息をのみ、愛くるしい愛世を夢中で見つめた。

それから身を屈めるようにして彼女の腰に腕を回すと、その漆黒の瞳を覗き込む。

愛世は瞳を細め、瑞々しい唇をアルファスに寄せて囁いた。

「キスして、アルファス」

「……アイセ…」

精悍な頬を斜めに傾けて愛世に近づけると、アルファスは更に力を込めて彼女の体を抱き寄せた。

「うっ…」

その瞬間、愛世の口から苦しげな吐息が漏れる。
< 119 / 168 >

この作品をシェア

pagetop