スセリの花冠
エリーシャは歯ぎしりした。

アルファスはザリンダルに守られている。

これ以上は我が身が危ない。

ならば。

とぐろを巻いて一回転すると、エリーシャは更に上へと駆け登った。

それからしばらく舐めるように地上を見下ろしていたが、やがてピタリと一点に視線を合わせると口角を引き上げて笑った。

「見つけたぞ、アイセ」

まずい。

「待てっ!!」

エリーシャの悪意に満ちた微笑みに、アルファスは必死で言葉を放った。

「お前の目的は王である俺だろう!!」

そんなアルファスを一瞥すると、エリーシャは皮肉げに言葉を返した。

「己だけがザリンダルに守られ、アイセは丸腰とは……呆れた王よ!」

言うや否や狙いを定め、急降下し始めたエリーシャに、アルファスは成す術もない。

アイセ…!

「魔性が現れた!!近衛兵!直ちに配置に付けっ!!特別騎馬隊は魔性を見つけ次第斬り込め!!皆、アイセを守るんだ!」

その声に伝令係が素早く反応し、各隊長の元へと急いだ。

たちまち警備兵は武器を構え、歩兵達はエリーシャを追い始める。

アイセ、逃げてくれ…!!

アルファスはザリンダルを握る手に力を込め、自らもエリーシャの後を追った。
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