スセリの花冠
「ディアランを想い続けても辛いだけだぞ?報われなくていいのか」

愛世が頷く。

「……無理矢理忘れようとしても無駄だと思うの。これからも彼を思って泣いてしまうかもしれないけど、自然にこの気持ちが想い出に変わるのを待つわ」

アルファスは静かに耳を傾けていたが、やがてホッと息をついた。

そしておもむろに出入り口に眼をやると、

「だそうだ。思い出にされたくないならさっさと入ってこい、ディアラン!」

……え?

意味が分からずポカンとする愛世の視界に、ディアランが映る。

嘘。

どうしてここにディアランが?!

……いやだ……話を聞かれた…!

恋人がいるディアランに、こんな気持ちを知られてしまうなんて。

迷惑がられているのではないかと思うと惨めで情けなくて、愛世はいたたまれなくなりディアランから顔をそむけた。

そんな愛世の頭にポンと手を置くと、アルファスがクスリと笑う。

「今回は、兄に花を持たせてやる」

立ち上がったアルファスのマントが翻り、愛世の頬に風が触れる。

去ろうとするアルファスを感じて、愛世は思わず顔をあげた。

今ディアランと二人きりになる勇気はない。

そんな愛世の心情などお構いなしに、アルファスは低くよく通る声を出した。
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