スセリの花冠
互いの視線が絡み動けないでいる中、先に愛世が口を開いた。

「……あの……家を建てるのが凄く早くて」

家……。

ディアランは、思わず笑った。

「これはアクヤというんだ。家じゃない」

「アクヤ?テントみたいなやつ?」

「テント?テントとはなんだ?」

愛世は焦って言葉に詰まった。

テントをなんと説明したらいいか分からなかったからだ。

まごまごしている内にディアランがそっと愛世の手を取り、小さい方のアクヤへと誘った。

「こっちにおいで」

それを見た隊員達がまたしても口笛を吹いたりわーわーと囃し立てた。

そんな部下達をディアランが優しく睨む。

「こら、お前達。俺はなにもしない」

愛世は焦って立ち止まった。

も、もしかして、私とディアランが二人きりであのテントに……?

いやそれは……いくらなんでもまずいわ。

愛世は必死で冷静さを保ちながらディアランに声をかけた。

「あの、ディアラン……私は中には入らない。外で寝るわ」

愛世は病室で着ていたワンピース一枚だけであったが、平気だと思った。

寒くないどころか暖かいし、月も明るい。

一晩くらい外で寝たって構わないわ。

するとディアランは、驚いたように愛世を見つめた。
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