スセリの花冠
愛世は慌てて頷いた。

「それとディアラン」

ディアランが、アルファスを見上げる。

「アイセは病み上がりだぞ。少しは我慢したらどうだ」

……いつからこいつはマーザになったんだ。

そう思いつつ何も言い返せないディアランを一瞥すると、アルファスは颯爽と踵を返した。


****

その日の夕方、愛世は巫女に連れられドロスの神殿へと向かった。

周囲には大理石の列柱が、天に向かっていく本もそびえ立っている。

かなりの高さだ。

愛世は自分の事ながら、ここから飛び降りてよく命があったものだと思った。

神殿内には至るところに神々のレリーフが施されていたが、とりわけドロス神のものはどの神々のそれよりも大きかった。

一定の距離を保って設けられている腕木の松明が、沈みゆく夕陽と同じ色をしている。

……なんて美しいの。

雄大で幻想的なこの国の建築物を、愛世は改めて素晴らしいと思った。

なだらかに続く長い階段を登り、ようやく神殿の中に入った愛世は、思わず息を飲んで足を止めた。

広い部屋の突き当たりには巨大なドロス神の石像が祀られている。

その前には玉座があり、既に王であるアルファスが腰掛けていた。
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