スセリの花冠
……俺と一晩過ごすより、兵に紛れて外で寝たいと?
ディアランは、拒否された事に僅かながら傷ついた。
今までどんなことであろうが、女を誘って断られた事など一度たりともなかったからだ。
はっきり断った愛世の瞳は真っ直ぐにこちらを向いていて、ディアランは愛世がわざと焦らしているのでも、冗談で断っているのでもないことに気づいた。
なんという屈辱なんだ。
…ティオリーン帝国一の策士でもあり武術に長けた自分が、こんなか弱い女に鼻もひっかけてもらえぬとは。
……ならば。
ディアランは、こちらを心配そうに窺う愛世を困らせてやりたくなった。
そこでわざとこんな言葉を投げてみる。
「野営の兵に紛れて眠りたいというのか。これはとんでもなく手馴れたことだ」
愛世はビックリしたようにディアランを見た。
……なにそれ。
私が沢山の男の間で夜を過ごしたいって思ってるわけ?
それを楽しみにしているとでも言いたいの?
愛世は眉を寄せた。
残念だと思ったからだ。
この端正な顔立ちの近衛兵隊長ディアランは、私を軽々しい女だと思っているんだ。
そうじゃないのに。
ただ私は精一杯生きて、本当に真剣に生きて、残りわずかな人生を楽しみたいだけなのに。
だから出逢ったばかりの男と、行きずりの関係など持ちたくないだけなのに。
ディアランは、拒否された事に僅かながら傷ついた。
今までどんなことであろうが、女を誘って断られた事など一度たりともなかったからだ。
はっきり断った愛世の瞳は真っ直ぐにこちらを向いていて、ディアランは愛世がわざと焦らしているのでも、冗談で断っているのでもないことに気づいた。
なんという屈辱なんだ。
…ティオリーン帝国一の策士でもあり武術に長けた自分が、こんなか弱い女に鼻もひっかけてもらえぬとは。
……ならば。
ディアランは、こちらを心配そうに窺う愛世を困らせてやりたくなった。
そこでわざとこんな言葉を投げてみる。
「野営の兵に紛れて眠りたいというのか。これはとんでもなく手馴れたことだ」
愛世はビックリしたようにディアランを見た。
……なにそれ。
私が沢山の男の間で夜を過ごしたいって思ってるわけ?
それを楽しみにしているとでも言いたいの?
愛世は眉を寄せた。
残念だと思ったからだ。
この端正な顔立ちの近衛兵隊長ディアランは、私を軽々しい女だと思っているんだ。
そうじゃないのに。
ただ私は精一杯生きて、本当に真剣に生きて、残りわずかな人生を楽しみたいだけなのに。
だから出逢ったばかりの男と、行きずりの関係など持ちたくないだけなのに。