スセリの花冠
兵達がどうとかではなく、ただただディアランの瞳が、愛世を捉えて離さなかったのだ。
ディアランは女ひとりが気になって一晩中眠れなかったという事実に、我ながら驚いた。
…ダメだ。……俺は、重症だ。
ディアランはゆっくりと立ち上がると幕を両手で押し広げた。
柔らかな朝の日差しを受けながら眠る愛世は、この上なく美しい。
いくら暖かいといっても朝方は少し冷え込む。
風邪などひかせたくない。
ディアランは、愛世に近づくとそっと抱き上げた。
漆黒の長い髪がフワリフワリと揺れ、柔らかな体からは甘い匂いが漂う。
僅かに開いた唇は桜貝のように淡いピンクだ。
ディアランはアクヤの中の寝台に彼女を運ぶと、そっと横たえた。
…見慣れぬ衣服に身を包み、甘い果実のような香りを漂わせた、漆黒の髪と漆黒の瞳の乙女。
ティオリーン帝国の者ではなさそうだ。
一体どこから来たのだろう。
その時だった。
顔のすぐ近くで小さく空気が動き、愛世はパチッと眼を開けた。
途端、こちらを覗き込んでいたディアランと眼が合い、思わず飛び起きて後ろへ下がった。
「……っ」
一方ディアランは、急に眼を開けて飛び起きた愛世に見とれていたのを悟られたと思い、決まり悪そうに咳払いをした。
な、なんだ、俺は。凄く不自然じゃないか。
ディアランは女ひとりが気になって一晩中眠れなかったという事実に、我ながら驚いた。
…ダメだ。……俺は、重症だ。
ディアランはゆっくりと立ち上がると幕を両手で押し広げた。
柔らかな朝の日差しを受けながら眠る愛世は、この上なく美しい。
いくら暖かいといっても朝方は少し冷え込む。
風邪などひかせたくない。
ディアランは、愛世に近づくとそっと抱き上げた。
漆黒の長い髪がフワリフワリと揺れ、柔らかな体からは甘い匂いが漂う。
僅かに開いた唇は桜貝のように淡いピンクだ。
ディアランはアクヤの中の寝台に彼女を運ぶと、そっと横たえた。
…見慣れぬ衣服に身を包み、甘い果実のような香りを漂わせた、漆黒の髪と漆黒の瞳の乙女。
ティオリーン帝国の者ではなさそうだ。
一体どこから来たのだろう。
その時だった。
顔のすぐ近くで小さく空気が動き、愛世はパチッと眼を開けた。
途端、こちらを覗き込んでいたディアランと眼が合い、思わず飛び起きて後ろへ下がった。
「……っ」
一方ディアランは、急に眼を開けて飛び起きた愛世に見とれていたのを悟られたと思い、決まり悪そうに咳払いをした。
な、なんだ、俺は。凄く不自然じゃないか。