スセリの花冠
けれど愛世はそんな事は気にもとめず、自分の身体を見下ろしたあと、ディアランをジッと見つめた。

…なんで私、ここで寝てるんだろう。

もしかして眠ってる隙に、ディアランが…。

やだ……!でも何かされたりとかしたら……いくらなんでも起きるわよね。

でも、でも…。

ディアランは、そんな愛世の様子を見て小さく息をつくと口を開いた。

「さっき運んだんだ。木にもたれたまま眠り続けては、身体にこたえるだろう」

あ……。

愛世は、視線を反らせて腕を組み、感情を殺すように話すディアランを見ていたが、何だかわざとらしく思い、言葉を返さなかった。

そんな愛世の表情が、何だか自分を疑っているようで、ディアランは唇を引き結んだ。

…心外だ。

言い訳などしたくはないが、やはり誤解はされたくない。

ディアランは逞しい腕を上げ、彼女の頭に優しく手を置いた。

「嘘じゃない。本当だ。それだけだ」

「……じゃあ……信じる」

愛世の、夜空のような瞳が安心の色を見せ、ディアランは内心胸を撫で下ろした。

あらぬ疑いで印象を悪くしたくはない。

「ありがとう、ディアラン」

愛世が真っ直ぐにこちらを見てそう言った。

「ああ」

ディアランは、至近距離から真っ直ぐに自分を見つめる愛世を、いとおしく思った。

出来ることなら、押し倒してしまいたいくらいだ。
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