スセリの花冠
「着方が分からないなら……手伝おうか?」

一方愛世は、ブンブンと首を横に振ると赤くなって言葉を返した。

「えっ、いいよっ、自分で着るから」

大きな瞳が困ったように瞬いてディアランを見ている。

…いちいち可愛い。

クスクスと笑いながら愛世に背を向けるとディアランは、

「これでいいか?」

「う、うん」

ティオリーン帝国の女性の服は一見するとシンプルなワンピースといったところだが、中にワイドパンツのような形のものを着用するのが通常である。

愛世が渡されたそれは、柔らかな絹を薄緑に染め上げてあり、ウエストは濃い茶色の組紐で結んでとめるものだった。

「着替えたわ。もういいよ」

背中を向けているディアランに愛世が声をかけると、彼はゆっくりと振り返り次の瞬間わずかに眼を細めた。

……よく似合っている。

最初に着ていた服よりも、均整のとれた身体の線がよくわかる。

それに加えスラリと伸びた二の腕は、守ってやりたくなるほど細い。

ディアランは眩しそうに愛世を見てこう言った。

「許してくれ。髪飾りがなくて。明日には揃えさせる」

予想外の言葉に、愛世は驚いて答えた。

「とんでもない!そんなの悪いわ。それにこの服の代金だって働いて返します」

「働く?」

愛世は頷いた。
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