スセリの花冠
やだ、まずいわ。また目眩が…。

愛世は少しでも目眩を軽くしたいと思い眼を閉じようとした。

しかしその瞬間、

「アイセ」

……え？

自分しか居ないはずの病室から女性の声がして、愛世はビクリとした。

「アイセ」

……誰？！

するとあっという間に歪んだ天井から光が差し込み、その光が人の形に変わると次の瞬間には女性となった。

…な、なに？誰？！

愛世は瞬きも忘れ、突如として現れた美しい女性を見つめた。

目の前の女性は素晴らしい色に染め上げた絹の衣を身にまとい、頭には牡丹やユリ、野菊などをあしらった花の冠をかぶり、長い髪には様々な飾りを編み込んでいる。

整った顔立ちは気品に満ちていて、それはそれは美しかった。

これは……きっと女神様に間違いない。

愛世は思った。

ああ、とうとう私……死ぬんだわ。

だからこんなに綺麗な女神様が迎えにきてくれたんだ。

今から死んでしまうのは残念だけど……女神様が迎えに来てくださるなんて……嬉しい。

愛世はそう思うと微笑んでこう言った。

「女神様でしょう？なんて美しいの…。それにそのお花の冠、すごく素敵…」

そんな愛世の表情に、須勢理姫は驚いて眉をあげた。

神を目の当たりにして驚かぬ人間は珍しい。
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