スセリの花冠
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愛世は徹夜で掃除道具を作った。
ディアランの屋敷で働いているマーザに糸と針、要らない布切れを大量にもらい、雑巾やハタキなどを出来るだけ多く作ったのである。
この国の掃除のやり方や道具を知らなかったから、自分の使いやすい馴染みの物を作った方が良いと思ったのだ。
愛世は用意された朝食を急いで食べると、足早に近衛兵の宿舎に向かった。
勤務を終えた部隊と、始める部隊が入り乱れていたが、誰も愛世達の事など気に止めなかった。
20人ほどの掃除係がいたが、それでも宿舎は広く、大変であった。
でも、愛世は楽しかった。
働けた事が嬉しかったのだ。
ディアランは、愛世が毎日楽しそうにしていたので何があったのかと訊ねたが、彼女はニコニコと笑うだけであった。
「何だ、俺に内緒事か?」
ディアランが赤茶色の瞳を優しく光らせると、愛世は決まってディアランの頬にキスをし、彼を自分の部屋から追い出してしまった。
…なんだ、俺は子供か?いつまでキスの場所が頬なんだ。
ディアランは少々不満だったが愛世が城の暮らしに馴染み、元気にしていたのでそれが何よりだと思い、安心した。
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愛世が掃除の仕事を始めてちょうど二週間ほど経ったある日のことである。
仕事を終えてディアランの屋敷に帰ると、自分の部屋のなかに人影が見えた。
愛世はてっきりディアランだと思い、結んでいた髪をほどきながら勢いよく部屋へ足を踏み入れ、彼の名前を呼んだ。
愛世は徹夜で掃除道具を作った。
ディアランの屋敷で働いているマーザに糸と針、要らない布切れを大量にもらい、雑巾やハタキなどを出来るだけ多く作ったのである。
この国の掃除のやり方や道具を知らなかったから、自分の使いやすい馴染みの物を作った方が良いと思ったのだ。
愛世は用意された朝食を急いで食べると、足早に近衛兵の宿舎に向かった。
勤務を終えた部隊と、始める部隊が入り乱れていたが、誰も愛世達の事など気に止めなかった。
20人ほどの掃除係がいたが、それでも宿舎は広く、大変であった。
でも、愛世は楽しかった。
働けた事が嬉しかったのだ。
ディアランは、愛世が毎日楽しそうにしていたので何があったのかと訊ねたが、彼女はニコニコと笑うだけであった。
「何だ、俺に内緒事か?」
ディアランが赤茶色の瞳を優しく光らせると、愛世は決まってディアランの頬にキスをし、彼を自分の部屋から追い出してしまった。
…なんだ、俺は子供か?いつまでキスの場所が頬なんだ。
ディアランは少々不満だったが愛世が城の暮らしに馴染み、元気にしていたのでそれが何よりだと思い、安心した。
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愛世が掃除の仕事を始めてちょうど二週間ほど経ったある日のことである。
仕事を終えてディアランの屋敷に帰ると、自分の部屋のなかに人影が見えた。
愛世はてっきりディアランだと思い、結んでいた髪をほどきながら勢いよく部屋へ足を踏み入れ、彼の名前を呼んだ。