スセリの花冠
「アイセ。この服は誰にもらった?」

起きて間なしの愛世は、状況がよく分かっていない。

一方ディアランは、自分以外の人間が愛世に接触している事に焦燥感を覚えていた。

イラつきを隠そうとしてつい早口になる。

「……アルファス王に」

「アルフがここへ?」

そんな話は聞いてない。

門番は、なにも言わなかった。

「いつ?」

「…昨日…」

…昨夜会ったが、アルファスはディアランになにも言わなかった。

…愛世を間者だと決めつけたものの、読みが外れて決まりが悪かったのか。

「……そうか」

ディアランはそこで言葉を切ると、横たわったままの愛世に顔を寄せた。

…女に根掘り葉掘り尋ねるのは、俺らしくない。

鼻と鼻が触れそうな距離で、ディアランは諦めたように微笑んだ。

「では、一緒に朝飯を」

愛世はうんと頷いて、ディアランの頬にキスをした。

ディアランは一足先に部屋を出ながら思った。

…セロ、掃除…まったく。

****

ディアランと朝食を終えた愛世は、食器を片付けると壁の時計をみた。

それに気付いたディアランは、さりげなく声をかける。
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