スセリの花冠
その時である。
足を踏み入れた木々の根元から、何か声がしたような気がして愛世は足を止めた。
なに、誰かいるの…?
ソロリと一歩ずつ足を進めると、草むらの陰に折り重なる人影が見える。
なんとそれは愛し合う男女の姿で、愛世は思わず息をのみ硬直した。
その途端、リンにもらったローズオイルをうっかり落としてしまい、たちまち辺りに薔薇の香りが広がる。
一方、カシャンと瓶の割れる音に、二人の男女は弾かれたように身を起こした。
女性は一瞬愛世を見たが、素早く胸の前で衣をつかみ寄せると、アッという間に去っていった。
どうしよう、こんなところを見てしまうなんて……!
気まずくて成す術もない愛世の前で、ゆらりと男性が立ち上がった。
あっ……!
後に残った男性を見て、愛世の鼓動が大きく跳ねた。
なんとそれは、アルファス王その人だったのだ。
アルファスは、呆然とこちらを見る愛世に眼を見開いた。
そんなアルファスの夜着の胸元は大きくはだけ、赤い跡があちこちに見える。
愛世は動けずに、ただじっとアルファスを見つめた。
…王様って……多分どこの王様でもこういう感じなんだわ。
必死で自分に言い聞かせて、愛世は落ち着こうとした。
一方アルファスは、愛世の黒い瞳を見て奥歯を噛み締めた。
足を踏み入れた木々の根元から、何か声がしたような気がして愛世は足を止めた。
なに、誰かいるの…?
ソロリと一歩ずつ足を進めると、草むらの陰に折り重なる人影が見える。
なんとそれは愛し合う男女の姿で、愛世は思わず息をのみ硬直した。
その途端、リンにもらったローズオイルをうっかり落としてしまい、たちまち辺りに薔薇の香りが広がる。
一方、カシャンと瓶の割れる音に、二人の男女は弾かれたように身を起こした。
女性は一瞬愛世を見たが、素早く胸の前で衣をつかみ寄せると、アッという間に去っていった。
どうしよう、こんなところを見てしまうなんて……!
気まずくて成す術もない愛世の前で、ゆらりと男性が立ち上がった。
あっ……!
後に残った男性を見て、愛世の鼓動が大きく跳ねた。
なんとそれは、アルファス王その人だったのだ。
アルファスは、呆然とこちらを見る愛世に眼を見開いた。
そんなアルファスの夜着の胸元は大きくはだけ、赤い跡があちこちに見える。
愛世は動けずに、ただじっとアルファスを見つめた。
…王様って……多分どこの王様でもこういう感じなんだわ。
必死で自分に言い聞かせて、愛世は落ち着こうとした。
一方アルファスは、愛世の黒い瞳を見て奥歯を噛み締めた。