スセリの花冠
見られてしまったという事実が、身を裂くような罪悪感を生んだ。

「申し訳ございませんでした」

愛世はカラカラに渇いた喉を必死で押し開き、こう言って頭を下げると来た道を引き返そうとした。

アルファスは静かな声で、そんな愛世に待てと言った。

嫌だ、呼び止めないで欲しい。

愛世は止まらなかった。

すぐに立ち去りたかったのだ。

「きゃあっ!」

けれどアルファスは、待たない愛世を大股で追い、腕を掴んだかと思うと力一杯引き寄せた。

小さく叫んだ愛世は、反動で倒れそうになり眼を閉じた。

靴が脱げ、アルファスの硬い胸に頬がぶつかる。

その衝撃に驚いて見上げると、間近に無理矢理キスをした唇と、冷たげな黄金色の瞳があった。

途端に、服を引き裂かれた恐怖を思い出し身が震える。

ああ、また王様を怒らせてまった。

「謝ります。だから許してください」

愛世は出来るだけアルファスから身を離そうと力をいれた。

「なんにもしない。怒ってなどいない」

アルファスは、静かに言った。

「離してください」

「嫌だ」

「なぜですか?」

どうしてか、アルファス自身も分からなかった。
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