スセリの花冠
第五章
忍び寄る殺意
****
愛世はディアランの腕に抱かれたまま、睡魔に襲われ不覚にも眠ってしまった。
一方ディアランは、寄り掛かってくる愛世が口付けより先を望んでいると思ったのに、顔を起こして彼女を見るとスースーと静かな寝息をたてて眠り込んでいたので呆気にとられた。
こんないい雰囲気で寝るとは……ありえない!
余程疲れているのだろう。
それもこれも全部セロ……いや、仕事などしているからだ。
わずかに開いた桜色の唇、閉じられた眼の縁の長い睫毛。
……なんて無防備な寝顔なんだ。
ディアランはそんな愛世を少しだけ恨めしく思い、宿舎の掃除係をやめさせようと再び決心した。
****
「絶対嫌!」
愛世は強い口調でこう言うと、ディアランを睨んだ。
なんと朝食時、ディアランが近衛兵隊の宿舎の掃除係を辞めるようにと言ってきたのだ。
「他の仕事でもいいじゃないか。なにもよりによって宿舎の掃除なんて」
近衛兵隊は、主にティサの都を守る軍隊である。
催し物の開催時には真っ先に目立つ隊であるがゆえに見目麗しい男達が揃っていて、彼らは女の話に余念がない。
そんな男共の中に愛する女を放り込めるか!
こちらを見上げた大きな瞳に心が揺らぎそうになるが、ディアランはグッとこらえた。
「ダメだったら、ダメだ」
「バカ!ディアランの分らず屋」
愛世はディアランの腕に抱かれたまま、睡魔に襲われ不覚にも眠ってしまった。
一方ディアランは、寄り掛かってくる愛世が口付けより先を望んでいると思ったのに、顔を起こして彼女を見るとスースーと静かな寝息をたてて眠り込んでいたので呆気にとられた。
こんないい雰囲気で寝るとは……ありえない!
余程疲れているのだろう。
それもこれも全部セロ……いや、仕事などしているからだ。
わずかに開いた桜色の唇、閉じられた眼の縁の長い睫毛。
……なんて無防備な寝顔なんだ。
ディアランはそんな愛世を少しだけ恨めしく思い、宿舎の掃除係をやめさせようと再び決心した。
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「絶対嫌!」
愛世は強い口調でこう言うと、ディアランを睨んだ。
なんと朝食時、ディアランが近衛兵隊の宿舎の掃除係を辞めるようにと言ってきたのだ。
「他の仕事でもいいじゃないか。なにもよりによって宿舎の掃除なんて」
近衛兵隊は、主にティサの都を守る軍隊である。
催し物の開催時には真っ先に目立つ隊であるがゆえに見目麗しい男達が揃っていて、彼らは女の話に余念がない。
そんな男共の中に愛する女を放り込めるか!
こちらを見上げた大きな瞳に心が揺らぎそうになるが、ディアランはグッとこらえた。
「ダメだったら、ダメだ」
「バカ!ディアランの分らず屋」