スセリの花冠
「ばか、ディアラン様に叱られるだろうが!」

言い終えるとセロは、太陽のように明るく笑った。

「今日、ディアラン様はやたらと俺をジロジロ見るんだ」

ギクッとして愛世は思わずセロから眼をそらし、

「き、気のせいよ」

「そうか?」

「そうよ、きっと気のせい。じゃあね、セロ!またね!」

愛世はもう一度セロにお礼を言ってその場を後にすると、受け取った靴に視線を落とす。

自分では探しに行けなかった靴をセロに取ってきてもらったのだ。

愛世はもう二度とアルファスと出くわしたくなかった。

一方アルファスは愛世が必ず靴を取りに来ると思い、見つけたそれをちょっと探せば分かる場所に置き、離れた所で待っていた。

その間に自問自答を繰り返す。

…俺は、どうしてあの女に逢いたいんだ?

懺悔の気持ちを示したいからか、あるいは弁解したいからなのか。

とにかく愛世に会いたいということだけは確かだった。



夕方頃であった。

ひとりの男が下をキョロキョロしながらやって来て、愛世の靴を見つけると拾い上げた。

……あのマント……近衛兵だ。

アルファスは近衛兵に気付かれない距離を保ち、後をつけた。

そして……。
< 59 / 168 >

この作品をシェア

pagetop