スセリの花冠
それから頭の冠に手を伸ばすと、そこから福寿草の花をひとつ抜き取り、愛世の眉間に優しく押し付けた。

「眼を閉じて」

言いながら両腕を開いて愛世を抱くと、自らも眼を閉じて呪文を唱える。

ああ、温かい……。

それから、とても眠いわ……。

愛世は心地好い須勢理姫の腕の中で、次第に瞼が重くなっていった。

でも……眠るなんてもったいない。

だってこんな貴重な体験、そうないもの。

夢であったとしても覚えておきたい。

けどもう…限界だわ……。

須勢理姫は思った。

……これを知ると、夫である大国主命(オオクニヌシノミコト)はなんと言う事やら。

人の運命を変える事を、大国主命は好まない。

……ならば。

須勢理姫は考えた。

彼の眼の届きにくい所で愛世の願いを叶えてやろうと。
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