スセリの花冠
「じゃあ、丁度良かったわ」

愛世は掃除をして貯めたお金の一部で、化粧品を買いたかった。

アルファスのお祝い事があるなら、なおのこと化粧品を買いに来て良かったと思い、愛世はディアランを見上げて口を開いた。

「ありがと、ディアラン。……それにしてもディアランは……素敵なお化粧品屋さんを知ってるのね」

品揃えが豊富な化粧品店の中をグルリと見回して、愛世は最後にディアランを見上げた。

「ああ、うん」

ディアランは返答に困り、小さく咳払いをして口元を手で覆う。

……色んな女にここで買ってやったとは、言いたくない。

「なんで黙ってるの?」

「ん、ん?」

「プレイボーイって、こういう時に使うのね、多分」

「プレイボーイ?なんだそれは」

すると愛世がニヤリと笑い、ディアランの耳に口を寄せた。

「女ったらしって意味らしいわよ」

…今は、違うぞ!今はアイセだけだ。

ディアランはそう言いたい気持ちを押し殺して、再び咳払いをした。


***

あれは…ディアラン!

近衛兵第一番隊隊長のディアランではないか。

エリーシャはしなやかな身のこなしで人波を泳ぐように歩き、ディアランのあとをつけた。

人混みを悠々と歩くディアランは一際背が高く、均整のとれた体格はよく目立った。
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