スセリの花冠
何故なら愛世の外見は可憐でか弱く、冗談など言いそうではなかったからだ。

反対に愛世は、丸くなったアルファスの眼を見て弾けるように笑った。

「ごめんなさい!なんだかおかしくて」

アルファスはそんな愛世に、決まり悪そうに白い歯を見せた。

「それは……言い過ぎだ」

愛世はクスクスと笑いながらアルファスを見上げた。

「ごめんなさい、からかってしまって」

愛世はニコニコしながら言った。

そんな愛世にアルファスは静かな声で言った。

「アイセ。俺を……許せ」

言い終えたアルファスの眼は、本当に真剣である。

……アルファス王……。

愛世は頷いて答えた。

「許すわ。今日が私達の最初にしましょう。それから、」

そこで言葉を切り、フワリと笑って愛世は続けた。

「私も……ごめんなさい」

「では……互いに許し合おう」

二人はしっかりと頷いた。


****


アルファスは毎日充実していた。

最北の領土は何年もの間、隣国との小競り合いが続いていたし最南端の帝国所有の島に隠居した父は身体の具合が思わしくなかったが、それでも継承記念日の準備は着々と進み人々が活気と笑顔に包まれているのを見るのは嬉しかった。

愛世は最初の印象とまるで違うアルファスに眼を見張った。
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