スセリの花冠
王の威厳を放つも、部下たちには優しい。

公務を要領よくこなし、外交にも手腕を振るう。

衣装作りの最中疲れた顔も見せず、入れ替わり立ち替わりやってくる家臣たちへ卒なく指示を出している。

「アルファス王、お疲れ様でございました。あとは私共が心を込めてお作りいたします」

「頼んだぞ」

衣装作りの責任者であるイリエスが深々とお辞儀をして去っていくと、仕立て係全員が退席する。

それを見計らったアルファスが小さく息をついた。

「アルファス、散歩しない?」

愛世の誘いにアルファスが軽く頷く。

「……ああ、そうだな」

**

アルファスはゆっくりと歩いた。

愛世に歩幅を合わせ、池に眼をやる。

愛世がポツリと呟いた。

「王様って大変なのね。…アルファスは凄いね」

アルファスは愛世を見た後、うしろを振り返り宮殿を見た。

「俺がすごいんじゃない。俺の周りの人間がすごいんだ」

空は陽が傾き始めて赤くなり、見上げたアルファスの瞳も美しく染まる。

そんなアルファスを見ていた愛世の脳裏にあの日の光景が蘇った。

茂みでアルファスが女性といたのを思い出したのだ。

「この間は邪魔しちゃって……ごめんね。帰り道を間違えてしまったの。お妃様は怒っていらっしゃらなかった?」

アルファスはその言葉を聞いて、弾かれたように愛世を見た。
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