スセリの花冠
「あれは、違うんだ」

たちまちのうちに、胸に焦げるような痛みが生まれて、アルファスは男らしい眉をギュッと寄せる。

「あれは……妻じゃない。俺に妻はいない」

「えっ、じゃあ……」

愛世は何と言っていいか分からず、口をつぐんだ。

自分で話を振ったくせに返す言葉がない。

それに、愛世はアルファスが結婚しているとばかり思っていた。

「で、でも、彼女を好きなんでしょ?」

アルファスは愛世を見ずに言った。

「好きじゃない…そんなんじゃない」

アルファスは苦し気に言った。

「あんな俺を見て…お前は俺が嫌いだろうな」

見上げた黄金色の瞳は罪悪感に満ちていて、愛世はどうしていいか分からずにこう言った。

「仲直りしたし……嫌いじゃないわ。私は好きな人としか嫌だけど…後悔してるのなら繰り返さなければいいと思うの」

考えながら、愛世はこう答えた。

それからハッとして自分の唇に触れる。

私は…あの夜、どうしてディアランのキスを受けたんだろう。

私は…ディアランを…?

アルファスは、そんな愛世をしばらく見つめた。

その時、

「アイセ」

馬の蹄の音と共に、ディアランの低い声が響いた。

「迎えにきたんだ」

「ディアラン!」
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