スセリの花冠
「ああ。気になる」
互いにじっと見つめ合い、やがてディアランが溜め息をついて天を仰いだ。
「なんで同じ女なんだ」
「許せ、ディアラン」
…強敵現る、だ。
ディアランは負けじと赤茶の瞳に力を込め、アルファスを見上げた。
「アイセは俺を好きになる。絶対にだ」
アルファスもまた、黄金色の瞳を挑戦的にきらめかせた。
「アイセの心を掴むのは、この俺だ」
宣戦布告し、颯爽と去っていくアルファスを見てディアランは思った。
……いずれアルファスは隣国の姫をめとらねばならぬ身分だ。
代々の王がそうしてきたように、彼もまたその運命を背負っている。
帝国の王が妻をめとるということがどういう意味なのか、アルファス自身分かっているはずなのだ。
なのに。
ディアランは弟のような若き王の後ろ姿を複雑な思いで見つめた。
頬を撫でる爽やかな風とは裏腹に、胸には重い霧が立ち込め、ゆっくりと広がり始めていた。
****
エリーシャは胸を撫で下ろした。
娼婦として城内に潜り込み、ようやくアルファスに近づけたものの、あの日あの黒髪の女に邪魔され彼の寝首をかけずにいた。
その後すぐに娼婦の館は取り壊され、エリーシャは他の女たちと同様、城から出されてしまったのである。
互いにじっと見つめ合い、やがてディアランが溜め息をついて天を仰いだ。
「なんで同じ女なんだ」
「許せ、ディアラン」
…強敵現る、だ。
ディアランは負けじと赤茶の瞳に力を込め、アルファスを見上げた。
「アイセは俺を好きになる。絶対にだ」
アルファスもまた、黄金色の瞳を挑戦的にきらめかせた。
「アイセの心を掴むのは、この俺だ」
宣戦布告し、颯爽と去っていくアルファスを見てディアランは思った。
……いずれアルファスは隣国の姫をめとらねばならぬ身分だ。
代々の王がそうしてきたように、彼もまたその運命を背負っている。
帝国の王が妻をめとるということがどういう意味なのか、アルファス自身分かっているはずなのだ。
なのに。
ディアランは弟のような若き王の後ろ姿を複雑な思いで見つめた。
頬を撫でる爽やかな風とは裏腹に、胸には重い霧が立ち込め、ゆっくりと広がり始めていた。
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エリーシャは胸を撫で下ろした。
娼婦として城内に潜り込み、ようやくアルファスに近づけたものの、あの日あの黒髪の女に邪魔され彼の寝首をかけずにいた。
その後すぐに娼婦の館は取り壊され、エリーシャは他の女たちと同様、城から出されてしまったのである。