スセリの花冠
第六章
エリーシャの涙
****
継承記念日の開催に向けて城への出入りが激しくなりはじめた。
それに伴い警備が最大に強化され、ディアラン達近衛兵隊も多忙を極めた。
ディアランは屋敷に帰る回数が減り、たまに帰ってきても倒れるように横になり、そのまま朝まで起きないことも珍しくなかった。
「ディアラン、大丈夫?」
愛世はそんなディアランを心配したが、彼は決まって優しく愛世を見つめ、
「平気だよ。それより、構ってやれなくてごめん」
その顔に浮かぶ疲労は色濃いが、愛世の頭に大きな手を乗せて、彼は微笑むばかりだった。
愛世はそんなディアランを止めることが出来ず、ただただ心配するしかなかった。
***
それから数日たったある日の事である。
「アイセ!」
声と同時に勢いよく入り口の幕が上がり、愛世が驚いて振り返るとそこにはアルファスが立っていた。
辺りを払うような、強い力をまとったようなその雰囲気に、愛世は思わず眼を細めた。
「アルファス……どうしたの?」
「僅かだが時間が空いた」
そう言いながらアルファスはドスドスと愛世に近づく。
その勢いに愛世は息を飲んだ。
「アルファス……?」
黄金色の瞳は強く輝いていて、その表情は何だか険しい。
なぜ急にアルファスがやって来たのかも、どうしてこんな気むずかしい顔をしているのかも愛世にはさっぱり分からない。
継承記念日の開催に向けて城への出入りが激しくなりはじめた。
それに伴い警備が最大に強化され、ディアラン達近衛兵隊も多忙を極めた。
ディアランは屋敷に帰る回数が減り、たまに帰ってきても倒れるように横になり、そのまま朝まで起きないことも珍しくなかった。
「ディアラン、大丈夫?」
愛世はそんなディアランを心配したが、彼は決まって優しく愛世を見つめ、
「平気だよ。それより、構ってやれなくてごめん」
その顔に浮かぶ疲労は色濃いが、愛世の頭に大きな手を乗せて、彼は微笑むばかりだった。
愛世はそんなディアランを止めることが出来ず、ただただ心配するしかなかった。
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それから数日たったある日の事である。
「アイセ!」
声と同時に勢いよく入り口の幕が上がり、愛世が驚いて振り返るとそこにはアルファスが立っていた。
辺りを払うような、強い力をまとったようなその雰囲気に、愛世は思わず眼を細めた。
「アルファス……どうしたの?」
「僅かだが時間が空いた」
そう言いながらアルファスはドスドスと愛世に近づく。
その勢いに愛世は息を飲んだ。
「アルファス……?」
黄金色の瞳は強く輝いていて、その表情は何だか険しい。
なぜ急にアルファスがやって来たのかも、どうしてこんな気むずかしい顔をしているのかも愛世にはさっぱり分からない。