スセリの花冠
私、刺された……!?

愛世は、まさか自分がエリーシャに狙われているなど露ほどにも思っていなかった。

……てっきりアルファスが刺されるとばかり……。

私……一体、どうなっちゃうの……?

……寒い……もうダメ。

それから、凄く怖い。

愛世は一気に身体が重くなり、その場に崩れ落ちた。

「アイセ!!」

あの女ー……!

愛世の後方から全てを見ていたディアランは、腰から短剣を引き抜くとすぐさまエリーシャに狙いを定めた。

「アイセーッ!!!」

アルファスもまた声の限り叫んだ。

そんなアルファスに、エリーシャが二本目の短剣で襲いかかる。

間に合え!!

ディアランは渾身の力を込め、エリーシャめがけて短剣を投げた。

「くっ!」

それに気付いたエリーシャは、飛んできた短剣を自分の剣で払い落とした。

アルファスはそんな中、一心不乱に愛世の元へ走った。

異変に気付いた人々は混乱し、悲鳴が響き渡る。

「近衛兵、弓矢隊、王を守れー!」

ディアランの叫び声と位置を示す仕草で、直ぐに弓矢隊がエリーシャを捉え、ピタリと構えた。

畜生!

壁上の弓矢隊の数に、エリーシャは歯ぎしりした。
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