スセリの花冠
第七章

後悔

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王都ティサはエリーシャの呪いの話題で持ちきりであった。

人々は夜の外出をなるべく避け、店では魔除けの札が置かれ飛ぶように売れた。

一方城内では愛世を心配する人々が連日宮殿に押し寄せ、いまだ眼の覚めない彼女を見舞った。

仕事仲間、近衛兵達やその家族、愛世に会った人間は誰もが愛世を好きになっていたのだ。

皆、愛世が意識を取り戻すのを一心に祈っている。

それを感じたアルファスがやるせなさそうに空を見上げた。

「アイセは人気者だな」

それから哀しそうに微笑む。

「死んでる場合ではないぞ、アイセ」

愛世は固く眼を閉じたままで、アルファスに答える事はなかった。

***

……暗い。それから、寒い。

愛世は真っ暗な空間にいた。

洞窟のようなそこは愛世ただ一人きりで、恐ろしく孤独だった。

ここはどこなんだろう。私はどうしてこんなところにいるのかしら。

寒くて凍えそう。

……なにも見えない。

佇んだまま眼を閉じて何があったか記憶を呼び覚まそうとすると、案外簡単に思い出した。

……そうだ、確か私……刺されたんだ、あの女の人に。

愛世は反射的に刺された胸を見下ろしたけれど、傷は見当たらず痛みもなかった。
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