スセリの花冠
***

「アルファ……ス」

愛世は眼を開けた。

…夢……?

何度か瞬きを繰り返している間、アルファスに強く手を握られて名を呼ばれた。

「ア、イセ…アイセ!」

もう一度アルファスと呼ぼうとしたが、上手く声が出ず、ただ彼をみつめた。

もう既に日が落ちていて暗かったが、アルファスの髪はランプの灯りに彩られて相変わらず綺麗だった。

「アイセ……よかった!」

アルファスの黄金の瞳は喜びに揺れ、綺麗な口元には笑みが浮かんでいる。

ああ、私……帰ってこられたのね。

愛世はアルファスに微笑んだ。

「私をずっと呼んでいてくれたのね。夢の中でもアルファスの声が聞こえていたのよ。それから光輝くあなたが見えた。だから帰ってこられたんだわ。ありがとう……アルファス」

するとアルファスは、愛世に柔らかい眼差しを向けた。

「優しい顔もするのね」

愛世が小さな声でそう言うと、アルファスは彼女に顔を寄せた。

「お前になら優しい顔もする。お前になら…アイセ、俺は」

一旦言葉を切り、アルファスは愛世をじっと見つめた。

大きな漆黒の瞳は部屋のランプの灯りで潤んで見え、アルファスは震えるような声で彼女に告げた。

「俺は、お前が好きだ」

男らしい顔立ちとは逆に囁くようなその声が、愛世に彼の恋心を教えた。
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