スセリの花冠
目覚めたばかりであまり頭が働かなかったが、その短い告白はしっかりと届いた。

眼を見開いた愛世にアルファスは続ける。

「お前は……俺が好きか?」

切なげに光るアルファスの瞳に愛世は言葉を失い、ただ彼を見つめた。

息を飲む愛世の瞳があまりにも丸くなっているのに気付き、漸くアルファスは自分の早急さに呆れて笑った。

「目覚めたところなのに……許せ。返事はまた今度でいい」

それから愛世の額に口づけ、

「今医者を呼ぶ。ゆっくり休め」

……アルファス……。

ひとりになった部屋で、愛世はアルファスの言葉を頭で繰り返した。

……アルファスが私を……。

愛世はゆっくりと眼を閉じた。

トクンと胸が鳴った。


****

愛世が眼を覚ましたとの知らせは、すぐにディアランの元にも届いた。

ディアランは知らせを聞くとその足で神殿を訪れ、ティオリーン帝国の守護神であるドロスに感謝の祈りを捧げた。

「ディアラン様、愛世の顔を見に行かないのですか?」

従えたセロが遠慮がちに尋ねると、ディアランは夜空を仰いだ。

「俺に愛世と会う資格はない」

「そんなことはございません!愛世はきっとディアラン様に見舞ってもらいたいはずです」

あれ以来、ディアランは自分を責めていた。

愛世に会わせる顔なんてない。

そして、ここにいる資格もない。
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