スセリの花冠
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愛世は考えていた。

ディアランはどうして一度も会いに来てくれないんだろう。

私を刺した女の人は死んだと聞かされたけど、どうして死んだの?

…誰に聞いても何も教えてくれないし、やたらと皆が『悪鬼』とか『満月の呪い』などという言葉を使い、ヒソヒソと話しているのを耳にする。

ああ、もう!

一体、何なの?!

それにこんなに長くディアランの顔を見ていないなんて心配だわ。

尋ねると近衛兵のみんなは「ディアラン様はいつもと変わらない」と教えてくれるけど、やっぱり顔が見たいし話がしたい。

……今日はまだ仕事かしら。それとも夜勤?

取り敢えずディアランに会いに行こう。

愛世は宮殿を出てディアランの屋敷へと向かった。

暫く歩いているうちに、愛世は城内が想像よりも広い事に気づいた。

宮殿からディアランの屋敷は、歩いて数十分以上かかった。

「やっと着いたわ」

屋敷の門の前に立つと、少し懐かしい気持ちになる。

門番に挨拶し、中へ入ると愛世はすぐにディアランを探した。

「……まあ……!アイセ様」

「ただいま、マーザさん!ディアランはどこ?」

屋敷の中庭まで進んだところで植木の手入れをしていたマーザと出会うと、彼女は愛世の回復を喜びつつ慌てた。
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