スセリの花冠
「あの、ディアラン様は今、来客中でして……」

「そう。じゃあ待つわ。急いでる訳じゃないの。ただディアランに会いたくて……」

そう言いながらマーザに手を振り、自分の部屋に向かおうとした時、勢いよく突き当たりの部屋の幕が跳ね上がった。

ディアラン?

そう思って眼を凝らすと、誰かの体が見えた。

「ディアラン?」

その直後、愛世は凍りついた。

それは愛世の知らない女性だった。

彼女の薄絹一枚のあられもない姿に、愛世は驚き目を見張った。

それからすぐ後にディアランが出てきたかと思うと、彼女を抱き締めるようにしながら向かい合い、口づけを交わした。

!!

愛世は息をするのも忘れ、二人を見つめた。

やがて女性から唇を離すと、ディアランがフッとこちらを見た。

次第にディアランの顔が強張る。

…アイセ…!

たちまちのうちにディアランの瞳に屈折した光が浮かび、彼は愛世から顔を背けた。

一方愛世は全身に冷水をかけられたような思いで、立ちすくんだ。

身体が二つに割けてしまいそうな程の衝撃。

「あら、失礼。ディアラン様?このお方はどなたですの?」

妖艶で美しいその女性は、上半身裸のディアランに腕を絡ませたまま、甘えるような眼差しで訊ねた。

「……彼女は……妹だ」
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