私と執事

風の贈り物 春

春昼の風が窓のカーテンを揺らす。
いたずらに過ぎる時間をもて余して、私は庭にいて、指先で小さな花をもてあそぶ。
「貴女は本当に庭が好きですね」
執事───彼は忙しそうにファイルや本を持って、近くの窓から顔を出す。
「ん、だってここ以外、遊べるところはないからね」
「そうですか」

彼の足音が遠退く。
彼はどんな時も忙しそう。
暇な時なんてないんだろう。
また彼の足音が近付いて来て。
廊下を行ったり来たりしてて。

風が庭の草花を揺らす。
葉が音をたて、風も近付いて来て。
髪をなぶり去る。
髪、グシャグシャじゃない。
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