私と執事
「随分、風に悪戯されましたね」
彼が庭に降りてくる。
「仕事は」
「終わりました」
「そう」
彼が徐に手袋を外して。
私の髪を梳く。
「くすぐったい」
「左様で」

時折、彼の指が首に触れる。
触れたとこが熱をもつ。
涼しい風が冷やすけど、意味なんてない。
「早く仕事を片付けて正解でした」
「どうして」
「貴女とここで風に当たりたかったので」
後ろの彼には見られないように。
私は唇を噛んだ。

どうやら風は。
彼をここへ贈りつけたみたい。
嬉しい贈り物は、風のように一瞬ではいなくならない。
私の後ろで、私をずっとドキドキさせている。
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